▼『世界が平和でより健康であるために』。こんなタイトルのメッセージを安倍晋三首相が11日、英医学誌「ランセット」電子版で発表した。「保健」は長年日本が提唱してきた「人間の安全保障」の中心的要素であり、地球規模の課題であるとして、日本が国際保健に貢献するという決意を表明している。
▼それによると、日本が国際保健分野で重視するのは、(1)公衆衛生危機に対応する体制を構築すること、(2)強靱で持続可能な保健システムの構築を、日本の経験と専門知識を活用して推進すること─の2点。来年5月に伊勢志摩で開く主要国首脳会議(G7サミット)でも議論するという。
▼公衆衛生危機に対しては、日本が基金を立ち上げて世界保健機関を支援する考えを提示。強靱で持続可能な保健システムの構築については、日本が1980年代初頭から健康指標が常に世界のトップであり続ける成果を誇り、今後は高齢社会に対応する先駆者として、健康寿命の延伸に挑戦すると表明した。
▼さらに、保健システム構築の目標を追求する上で重要な課題として、「感染症との戦いを進めるとともに、薬剤耐性の問題に取り組む」と強調。薬剤耐性については、今年のG7サミット(ドイツ)で確認された通り、ヒトや動物の健康、農業、環境を包含する「ワンヘルス・アプローチが重要」と指摘している。
▼今週の「まとめてみました」で紹介したように、世界規模で進む薬剤耐性問題への感染症の専門家の危機感は強い。そして、日本はこの問題で国際貢献できる創薬技術を有しているにもかかわらず、政治・行政の支援が弱いことに歯痒さも感じている。世界の人々を健康上の脅威から守るために、日本政府には、国際医学誌で発表した安倍首相の決意を早期に具体的政策に落とし込み、実現してもらいたい。