【質問者】
金居督之 金沢大学融合研究域融合科学系准教授
【産官学民連携によるエビデンスに基づいた取組み・評価の長期的な継続が必要】
健康政策の新たな指針「健康日本21(第3次)」では,「自然に健康になる環境づくり」が新しい視点として盛り込まれました。「本人が無理なく自然に健康な行動を取ることができるような環境」を整備する取組みが推奨されています。
個人を取り巻く環境は重要な健康の決定要因です。たとえば,歩きやすい近隣環境(ウォーカブルな環境)は歩行による身体活動を促進し,肥満や高血圧,2型糖尿病などのリスクを低減させると報告されています1)。また,ソーシャル・キャピタル(人との関係や助け合い)が豊かな地域では,要介護や認知症,死亡のリスクが低いことが明らかになっています2)。環境を上手くデザインすれば,日常生活を送る中で自然に健康水準が向上すると期待されます。さらに,国民の7割を占める健康無関心層にも恩恵をもたらす可能性があります。
自然と健康になる環境づくりには,産官学民の協働が不可欠です。ウォーカブルな環境を例に考えると,歩道の拡張や段差の解消など,道路設計は行政の都市計画部門,安全面では地域コミュニティによる見守り,賑わいづくりは民間企業など,様々な主体が連携した取組みが求められます。複雑な社会課題の解決をめざした産官学民連携をコレクティブ・インパクトと呼びます。コレクティブ・インパクトは,参画者の間でビジョンと目標を共有し,定期的にコミュニケーションを取りながら相互補完的な活動を行い,社会課題の解決をめざします。
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