【Q】
肺癌に対する胸腔鏡手術は,広く日本中で行われるようになりました。近年,ロボット支援手術も行われるようになりましたが,胸腔鏡手術とはどこが違うのでしょうか。鳥取大学・中村廣繁先生のご教示をお願いします。【A】
肺癌に対する胸腔鏡手術は「肺癌診療ガイドライン」上,推奨グレードC1(科学的根拠は十分ではないが行うことを考慮してもよい)で,標準手術としては十分とは言えません。手術支援ロボット“da Vinci”を用いた胸腔鏡手術(以下,ロボット支援手術)は3次元視野と7つの関節を持つ鉗子による精緻操作で,胸腔鏡手術の難点を補う新技術として期待され,わが国でも2012年の前立腺癌に対する保険適用以降,急速に普及してきています。しかしながら,肺癌に対する両者の前向き比較試験の報告はいまだなく,明らかな有用性は立証できていません。
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