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重症薬疹の早期診断と治療のポイント

No.4780 (2015年12月05日発行) P.62

阿部理一郎 (新潟大学大学院医歯学総合研究科 皮膚科学分野教授)

登録日: 2015-12-05

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

スティーブンス・ジョンソン症候群(Stevens-Johnson syndrome:SJS)や中毒性表皮壊死症(toxic epidermal necrolysis:TEN)などの重症薬疹について,早期診断と治療のポイントをご教示下さい。
特に治療においては,副腎皮質ステロイド,血漿交換,免疫グロブリン大量療法などの使いわけやタイミングなどをどのように考えればよいでしょうか。新潟大学・阿部理一郎先生のご教示をお願いします。
【質問者】
藤本 学:筑波大学医学医療系皮膚科教授

【A】

(1)SJS/TENの早期診断のポイント
SJS/TENは主に薬剤またはマイコプラズマ感染を原因とし,皮膚・粘膜のびらん,潰瘍を起こす疾患です。最重症型のTENはいまだ致死率が20%と高率であり,SJSにおいても視力障害などの重度の後遺症がしばしばみられます。
SJS/TENは,一般的に急速に発症・増悪することが多く,発症早期に診断できれば治療成績の改善も望まれると思われます。
SJS/TENの発症早期には,臨床的にはatypical target lesionが特異的です。辺縁が浮腫性でないflatな円心状紅斑を呈しますが,SJS/TENにおいてはtarget lesionを呈することもしばしばあり,注意が必要です。さらに迅速病理診断も有用であり,既に表皮の広範な壊死が認められれば速やかな診断に結びつきますので,施行可能施設については積極的検査が勧められます。
また眼症状においても,早期から眼脂や羞明,眼痛が明らかなことが多く,速やかな眼科専門医による診察が必須です。加えて,発熱や全身倦怠感も積極的に疑う所見です。
これらの所見が複数認められる場合は,速やかな治療の開始が望まれます。
(2)SJS/TENの治療のポイント
近々,厚生労働省科学研究班からSJS/TENの治療ガイドラインが発表される予定です。今後はこのガイドラインに沿った治療が行われ,治療成績が改善することが期待されます。
初期治療は高用量のステロイドまたはステロイドパルス療法とされています。ステロイドで発熱などの症状が改善しますが,皮膚粘膜症状の改善と乖離する場合も多く,慎重かつ速やかに評価することが重要です。ステロイド療法で改善が乏しい例,合併症などでステロイド投与が避けられる例に対して,免疫グロブリン大量療法または血漿交換が推奨されます。どちらも保険適用となっていますが,どちらの奏効率が高いかはエビデンスがない状況です。実際の症例の状態や,血漿交換が施行可能な施設か否かなどで選択すると思われます。
注意点は,血漿交換の場合,全血漿交換と二重膜濾過法での治療成績の差についてもエビデンスがないことです。しかし最近は,全血漿交換を選択する場合が多いようです。
(3)病態の評価
最後に病勢の評価についてですが,明らかに上皮化するまでには数日かかりますので,病勢が悪化しているのか,プラトーになっているのか,または改善しているのかの判断は時に困難です。たとえば,滲出液の量の低下や,皮膚疼痛の軽減,表面びらん皮膚色が紅色から白色調に変化したかなどでの判断が有用と思われます。

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