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乾癬治療薬の使いわけ

No.4783 (2015年12月26日発行) P.60

多田弥生 (帝京大学医学部皮膚科学講座准教授)

登録日: 2015-12-26

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

近年,乾癬に対する治療薬が次々と開発され,選択肢が増えたことは喜ばしいことですが,それぞれの治療薬の使いわけに困難が伴います。
使用上の注意点,特に副作用や確認しなければいけない項目なども含め,帝京大学・多田弥生先生のご教示をお願いします。
【質問者】
菅谷 誠:東京大学大学院医学系研究科・医学部皮膚科 准教授

【A】

現在,国内で乾癬に対して使用可能な薬剤はTNF阻害薬であるインフリキシマブ,アダリムマブ,IL-12/23阻害薬のウステキヌマブ(以上が既存のバイオ製剤),IL-17阻害薬のセクキヌマブです。尋常性乾癬,関節症性乾癬に対する保険適用は上記の薬剤すべてにあり,膿疱性乾癬と乾癬性紅皮症に保険適用があるのはインフリキシマブのみとなっています。
インフリキシマブは1~2時間の静注投与を0, 2,6週の後,8週おきに行い,アダリムマブは皮下注射を2週おき(自己注射導入でのまとめ処方可能),ウステキヌマブも皮下注射を0,4週の後,12週おきに投与します。忙しい人にはアダリムマブの自己注射か,ウステキヌマブの投与が好まれます。一方,セクキヌマブは0,1,2,3,4週の5週連続投与の後,4週に1回の投与となり,自己注射が認められていないため,特に最初は頻回の来院が必要です。
効果は既存のバイオ製剤のうち,効果発現が最も早いのは静注製剤のインフリキシマブですが,半年ほど経過した後の効果はどれも大きくは変わりません。一方,IL-17阻害薬のセクキヌマブの効果発現はインフリキシマブに劣らず早く,さらに,皮疹がなくなるPsoriasis Area and Severity In-dex(PASI)100達成率が40%前後と,既存バイオ製剤の20%前後を上回っており,高い効果が期待できます。
乾癬性関節炎に対する効果は,日本皮膚科学会のガイドラインでは臨床試験の結果などを考慮し,(1)TNF阻害薬,(2)セクキヌマブ,(3)ウステキヌマブの順の推奨度となっています。副作用発現率は大差なく,結核,HBVの再活性化にはどのバイオ製剤でも同様に注意が必要です。
なお,IL-17は真菌感染防御,黄色ブドウ球菌感染防御,好中球活性化に関連したサイトカインのため,セクキヌマブ投与中はこれらの感染症や好中球減少症に注意が必要です。さらに,海外の臨床試験で,クローン病がセクキヌマブ投与により悪化した症例が報告されているため,クローン病を有する患者への投与では注意するように日本皮膚科学会は呼びかけています。
インフリキシマブはキメラ抗体であるため,特に抗薬剤抗体出現に伴う二次無効の可能性があり,また,投与中止後,長期間あけての再投与ではアナフィラキシーを含む投与時反応の恐れがあるため,注意が必要です。

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