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掌蹠膿疱症における禁煙の重要性【喫煙していると,喫煙歴がまったくない場合に比べて発症リスクは74倍に】

No.4797 (2016年04月02日発行) P.57

山本明美 (旭川医科大学医学部皮膚科教授)

登録日: 2016-04-02

最終更新日: 2016-10-25

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【Q】

掌蹠膿疱症における禁煙の重要性は強調されるべきと思います。疫学・病態の両面から患者を説得できるよう,その関係についてお教え下さい。旭川医科大学・山本明美先生にお願いします。
【質問者】
高橋健造:琉球大学医学部皮膚科准教授

【A】

疫学的に,従来から喫煙と掌蹠膿疱症との強い関連が指摘されています。本症患者の85%以上が喫煙者で,特に女性患者の喫煙率が高いこと,ヘビースモーカーが多いことがわかっています。現在喫煙していると,喫煙歴がまったくない場合に比べて本症の発症リスクは74倍も高くなること,喫煙歴がない患者では掌蹠膿疱症を発症したとしても症状は軽いことが知られています。さらに禁煙すると症状が良くなることが前向き研究によって示されています。
喫煙が掌蹠膿疱症の発症・悪化に具体的にどのように結びついているかについてはまだ不明な点が多いのですが,最近少し明らかになってきました。
まず,患者の42%で血清中に抗ニコチン受容体抗体が検出されました。掌蹠の皮膚ではニコチン受容体のα7サブユニットの発現が他部位の皮膚より強く,特に表皮内汗管において高くなっています。患者血清を用いた蛍光抗体法では,血管内皮細胞や汗管細胞が陽性に染色されます。また,掌蹠膿疱症の初期病変は表皮内汗管から始まることも示されています。
以上から,たばこを吸う→抗ニコチン受容体抗体の産生→受容体の豊富な掌蹠の汗管に抗体が結合→汗管を中心とした炎症が惹起される,という反応経路が考えられます。
【参考】
▼ 橋本喜夫, 他:臨皮. 2006;60(7):633-7.
▼ Hagforsen E:Life Sci. 2007;80(24-5):2227-34.
▼ Michaelsson G, et al:J Am Acad Dermatol. 2006;54(4):737-8.
▼ Hagforsen E, et al:Acta Derm Venereol. 2002;82(5):341-6.
▼ Hagforsen E, et al:Br J Dermatol. 2002;146(3):383-91.
▼ Murakami M, et al:J Invest Dermatol. 2010;130(8):2010-6.

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