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ペースメーカー手術後の抗凝固薬継続投与の意義

No.4741 (2015年03月07日発行) P.57

小田倉弘典 (土橋内科医院院長)

登録日: 2015-03-07

最終更新日: 2018-11-27

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【Q】

ペースメーカー植え込み手術によって心房細動が消失した後も,抗凝固薬の投与を続けるのはなぜか。 (和歌山県 Y)

【A】

現在,心臓ペースメーカーによる心房細動予防法としては,2つのペーシングモードが考えられている。1つは,心房─心室の順次ペーシングにより房室伝導の同期性を確保する生理的ペーシングと呼ばれるものであり,もう1つは様々な新しいペーシングモデルを用いるものである。
生理的ペーシングは,単純な右室ペーシングに比べ,明らかに心房細動発症率を減らしたというメタ解析がある(ハザード比:0.80,95%CI:0.72~0.89)(文献1)。新しいペーシングモデルとしては,心房内の2箇所からペーシングする方法や,洞調律時に自己脈よりわずかに速いレートで連続ペーシングする抗頻拍ペーシング(オーバードライブ法)が開発されている。
最新の報告であるMINERVA試験(文献2)では,1300例を抗頻拍ペーシングの有無で無作為割り付けしたところ,一次エンドポイント(死亡,心血管入院,心房細動慢性化)は抗頻拍ペーシング群で有意に改善した(ハザード比:0.74, 95%CI:0.55~0.99, P=0.04)。心房細動の慢性化だけをみても33%から13%に減少している(P=0.004)。
しかしながら注意してほしいのは,各試験の対象患者はいずれも,徐脈のためにペースメーカーが必要な症例であるということである。また生理的ペーシング,抗頻拍ペーシングいずれも,前記のデータでわかるように,心房細動を必ずしもすべて消失させることはできないということである。つまり,これらペーシングは,徐脈のない症例での効果は証明されていないし,何より心房細動を完全に消失させる根本治療ではなく,あくまで頻度を減少させる治療である。
抗頻拍ペーシングなどにより心房細動の症状が改善されたとしても,無症候性も含めて,根治はされていないと考えるべきである。心房細動の根治療法とされるカテーテルアブレーションでさえ,アブレーション後の抗凝固療法中止のコンセンサスはいまだに得られておらず,無症候性心房細動の存在がありうることから少なくともCHADS2スコア2点以上の例では中止しないほうがよいとされている(文献3)。
以上より,現時点では心房細動再発予防を目的としたペースメーカー治療後は,たとえ症状が改善されたとしても,ガイドラインの推奨などに基づいた抗凝固療法が継続されるべきと考えられる。

【文献】


1) Healey JS, et al:Circulation. 2006;114(1):11-7.
2) Boriani G, et al:Eur Heart J. 2014;35(35):2352-62.
3) 日本循環器学会, 他:心房細動治療(薬物)ガイドライン(2013年改訂版).
[http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2013_inoue_h.pdf]

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