【Q】
小児用肺炎球菌ワクチン(PCV13)が65歳以上の高齢者にも適応になった。そもそも小児用に使用されてきたものを成人に使用する場合,量・回数的に1回の接種にて十分な免疫応答が獲得できるものなのか。成人以降に推奨されるべき予防接種のスケジュールを。 (大阪府 K)
【A】
一般的に乳幼児では,免疫系が未熟なため1回の接種では十分な免疫を付与できない。そのため,乳幼児に対する予防接種では,通常,複数回のワクチン接種が必要である。
小児を対象としたPCV13の国内臨床試験においては,4回接種で有効性,安全性が確認されている(文献1,2)。一方,成人に対する国内外の臨床試験では,PCV13は小児用量と同じ0.5mLの1回接種で23価肺炎球菌ワクチン(PPSV23)と同程度以上のオプソニン化貪食活性(OPA)の上昇が認められており,免疫系が発達した成人では0.5mLの1回接種で免疫が付与できると考えられる(文献3)。
なお,60~64歳の肺炎球菌ワクチン未接種者に対して,PCV13を1回接種した場合の3~4年後までのデータでは,OPAは接種1カ月後より低下するものの,接種前と比較して3~4年間は高いレベルに維持されるとされている(文献4)。
成人での理想的な接種スケジュールに関しては,現在のところ日本国内では確定したものはないが,2014年8月13日に米国予防接種諮問委員会(ACIP)にて決議された成人への肺炎球菌ワクチンの推奨は下記の通りとなっている(文献5)。
(1) 肺炎球菌ワクチン未接種か接種歴が不明の65歳以上の人では,まずPCV13を接種し,6~12カ月あけてPPSV23を接種。
(2) 65歳以上でPPSV23を1回以上接種したことがあり,PCV13未接種者は,PPSV23接種から1年以上間隔をあけてPCV13を接種。
(3) 65歳未満でPPSV23の接種歴がある人は,65歳になればPCV13を接種し,6~12カ月あけてPPSV23を接種(ただし,初回のPPSV23接種からPCV13は1年以上,PPSV23の2回目は5年以上経過した後に接種すること)。
ここでは,65歳以上のすべての人に対しPCV13とPPSV23の両ワクチンを接種すべきであると勧告されており,免疫応答の機序および肺炎球菌性肺炎の予防効果からPCV13を最初に接種することが望ましいと考えられる。
1) ファイザー社内資料:国内第Ⅲ相試験(非劣性試験・同時接種, 3024試験).
2) Togashi T:Pediatr Infect Dis J. 2013;32(9):984.
3) ファイザー社内資料:国内第Ⅲ相試験(非劣性試験, 未接種者, B1851088試験).
4) Jackson LA:Vaccine. 2013;31(35):3594-602.
5) Tomczyk S:MMWR. 2014;63(37):822-5.