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インフルエンザ皮下接種ワクチンと経鼻ワクチン併用の効果

No.4755 (2015年06月13日発行) P.62

長谷川秀樹 (国立感染症研究所感染病理部部長)

登録日: 2015-06-13

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

インフルエンザ予防接種は約6割の予防効果しかないと聞きます。インフルエンザワクチン皮下注射と,鼻に吹きかける生ワクチンを併用した場合,IgG抗体(血液内の抗体)およびIgA抗体(粘膜下抗体)の両方ができて,予防効果が増す可能性はあるでしょうか。ご教示下さい。
(東京都 F)

【A】

皮下注射によるインフルエンザワクチン接種の感染予防効果が低い理由は,感染の場となる気道粘膜上への分泌型IgA抗体の誘導がみられないためです。皮下注射により誘導される中和抗体であるIgG抗体は,主に血中に存在し重症化を防ぐ働きがありますが,粘膜上へは微量滲出するのみで,感染予防効果が低い傾向があります。
インフルエンザに感染すると,血液中のIgG抗体だけでなく粘膜上にIgA抗体が分泌されることが知られています。欧米で認可されている鼻に吹きかける生ワクチンは,病原性を低くした生きたウイルスを感染させて,実際にウイルスに感染したときと同様の免疫が誘導されることが期待されます。
インフルエンザワクチン皮下注射と鼻に吹きかける生ワクチンを併用した場合の予防効果については,被接種者の免疫状況と接種の順番により,その効果が左右されることが考えられます。
インフルエンザウイルスに曝露したことのないナイーブな人の場合,皮下接種ワクチンではそのプライミング効果が低いとされています。したがって,生ワクチンによりプライミングを行い,その後に皮下接種ワクチンを接種すると免疫応答は高くなることが考えられますが,その場合,生ワクチンのみでも予防効果が期待できます。
既にインフルエンザウイルスに対する基礎免疫を持っている人の場合,皮下接種によるブースター効果は期待できますが,逆に生ワクチンによる免疫応答が得られにくいことがあります。その場合,併用による免疫の増強効果はあまり期待できないと考えられます。
被接種者の免疫状況および皮下接種ワクチンと生ワクチンの接種順序によって免疫応答は様々です。
総合的に考えると,大多数の人において両者の併用による予防効果の増強は期待できないのではないかと考えられます。

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