【Q】
高速道路に入るときは,左車線から徐々に加速して進入するというのが普通だと思いますが,稀に右側からの入り口があります。このような入り口(あるいは出口)はどのくらいの頻度で存在するのでしょうか。右側から入る場合は事故なども多く発生しているのでしょうか。
(京都府 I)
【A】
ご指摘の通り,高速道路では入り口からの加速車線,出口への減速車線ともに,左側車線の外側に設置されるのが一般的です。しかし,用地上の制約が大きい都市高速道路(首都高速道路,阪神高速道路など)では,右側車線に設置されるものも少なくありません(図1)。たとえば首都高速道路では,入口185箇所のうち右側から合流するものが50箇所,出口195箇所のうち右側へ分流するものが48箇所と,それぞれ4分の1前後を占めています。
こうした左側・右側の違いと交通事故との関係を調べたものとして,首都高速道路の入り口またはジャンクション合流部における事故発生データをもとに,いくつかの合流部の事故発生率を求めた調査研究があります。ここでの事故発生率とは,事故発生件数をその地点の通過交通量で割ったもので,通過車両100万台当たりの事故件数という形で表されます。これによると,左側合流の場合の事故発生率は100万台当たり2.37~3.86件,右側合流の場合は1.93~3.03件となっており(文献1,2) ,道路線形なども影響するので一概には言えませんが,右側合流の場合に有意に事故が多く発生するということはありません。
一方で左右の違いは円滑性に影響を与えており,右側合流は左側合流よりも交通容量(渋滞せずに流せる車の台数)が小さいことが知られています。これは一般に右側車線は速度の速い車が多く走るため,そこに速度の遅い合流車両が流入すると車間が詰まり,渋滞につながりやすいからです。すなわち,高速道路を渋滞させないためには,左側合流のほうが有利と言えます。
こうしたことから,2015年3月に開通した首都高速道路中央環状品川線では,トンネルの左右を反転させ,進行方向の左側に反対車線がくる配置にしています。これにより,地上の一般道路から地下の高速道路に左側車線を利用してスムーズに合流・分流することを可能にしています(図2)。
1) 社団法人交通工学研究会:首都高速道路における交通安全対策の調査研究. 2000.
2) 花井正直, 他:土木計画学研究・講演集. 2003;28:Ⅷ(323).