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マイコプラズマ肺炎での薬剤耐性に他疾患へのマクロライド系薬長期投与が影響している可能性は?

No.4772 (2015年10月10日発行) P.58

泉川公一 (長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 新興感染症病態制御学系専攻感染免疫学講座 臨床感染症学分野教授)

登録日: 2015-10-10

最終更新日: 2016-10-25

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【Q】

近年,Mycoplasma pneumoniaeのマクロライド系薬に対する耐性が問題となっていますが,これにCOPDなどに対するマクロライド系薬の少量長期投与が関与している可能性はないのでしょうか。 (静岡県 M)

【A】

Mycoplasma pneumoniaeがマクロライド系薬に耐性を示す機序はわかっていますが,なぜ,耐性を獲得するか,実際のところ不明です。
米国Centers for Diseases Control and Prevention(CDC)によると,米国で耐性株が増加しているのは,おそらく,マクロライド系薬であるアジスロマイシンの使用が増えていることと関係がある,と記載されています(文献1)。また,ご指摘のCOPDに対して,マクロライド系薬が急性増悪の回数を減少させる効果があることが示されています(文献2)。しかし,このエビデンスは,2011年と比較的最近発表されたものであり,わが国では一般的な治療ではありません。むしろ,びまん性汎細気管支炎,気管支拡張症などで慢性気道感染症がある患者に,マクロライド系薬は少量長期で確かに使用されていますし,また,小児科領域でもマクロライド系薬の使用は少なくありません。
このようなマクロライド系薬の頻用が,Mycoplasma pneumoniaeの耐性獲得に寄与している可能性はあると思われます。マクロライド系薬の使用を制限するのではなく,服用期間を遵守させ,理由もなく処方することを避けるなど,適正使用が求められます。

【文献】


1) CDC:Antibiotic Treatment & Resistance .
[http://www.cdc.gov/pneumonia/atypical/mycoplasma/hcp/antibiotic-treatment-resistance.html]
2) Albert RK, et al:N Engl J Med. 2011;365(8):689-98.

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