日本癌治療学会学術集会では20日に国のがん対策を巡るシンポジウムも開催された。長崎市で在宅医療に取り組む白髭豊氏(白髭内科医院、写真)が講演し、地域ネットワーク構築をさらに促進するため、在宅医療スタッフの病院カンファレンスへの参加や緩和ケア医のアウトリーチに対する評価が必要だと指摘した。
白髭氏は、在宅訪問診療や往診を複数の医師が連携して行う「長崎在宅Dr.ネット」副理事長・事務局長を務める。講演では、長崎市など4地域で2008年度から3年間実施された、緩和ケア普及のための行政主導型のプロジェクト「OPTIM(Outreach Palliative care Trial of Integrated regional Model)」について紹介した。
OPTIM終了後は、長崎大緩和ケアチーム紹介入院患者の在宅移行数が増加したが、15年はその数が半減し長崎市の自宅死の割合も減少したと説明。長崎大からの在宅移行数が減った理由として、在院日数短縮による転院の症例の増加や、早期の緩和ケア導入によってPS(Performance Status)が良く在宅医療を導入する必要がない患者が増えたことを挙げた。その上で、「(自宅での看取りの増加を)推し進めるために、人が動くところに仕掛けを作っていかないと、今後なかなか在宅移行が進まないと考えている」と述べ、在宅医療スタッフの病院カンファレンスへの参加や緩和ケア医のアウトリーチに対する診療報酬上の評価を求めた。