改正道路交通法が昨年6月に施行され、一定の病気等により運転に支障があると思われる患者を診察した医師が、都道府県の公安委員会に任意で届け出る制度が始まった。今年6月には国会で再び改正道交法が成立。75歳以上の運転者が免許更新時に認知機能検査で「認知症の疑いあり」と判定された場合の医師診断書の提出が、2年以内に義務化されることとなった。予備群を含めて国内に800万人とも言われる認知症患者。相次ぐ法改正を受け、患者の運転指導はどう変わるのかについて、日本医大武蔵小杉病院の北村伸氏に聞いた。
認知症と診断したら、まず運転をやめるように伝え、免許の自主返納を勧めることが基本です。しかし、たいてい本人はすぐには納得しません。
そうした場合の対処として、昨年6月から医師による公安委員会への任意届出制度(図1)が始まりました。「診断即届出」ではなく、診察を通じて患者とのコミュニケーションを深めた末に、初めて浮かんでくる選択肢と考えたほうがよいでしょう。届出については、日本神経学会など5学会が合同で作成したガイドライン(表1)が参考になります。
ただ、運転中止の判断には、地域の特性を考慮する必要があります。公共交通機関の発達していない山間部などでは、自動車なしには通院や買い物も満足にできない地域があります。自治体がバスを走らせたり、タクシーチケットを配布しているなど、代わりの交通手段があれば運転中止を勧めます。
しかし、残念ながらそうした支援のない地域もあり、道交法上にも配慮はありません。山奥の人通りが皆無に等しい道だったら運転してもよいかもしれませんが、やはり安全を重視すべき医師の立場としては、認知症患者には運転中止を進言すべきです。
図1 公安委員会への任意届出制度(2014年6月〜)
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