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脳腫瘍に世界初承認されたウイルス療法とは?(藤堂具紀 東大医科研先端医療研究センター教授)【この人に聞きたい】

No.5074 (2021年07月24日発行) P.6

登録日: 2021-07-20

最終更新日: 2021-07-19

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がん細胞のみをウイルスで攻撃し抗がん免疫を惹起
将来的にはウイルス療法が
がん治療の標準治療を大きく変える可能性も

とうどう ともき:1985年東大医学部卒。米ジョージタウン大助教授、ハーバード大マサチューセッツ総合病院助教授などを経て、2003年東大病院脳神経外科講師、08年東大病院TRセンター特任教授、11年より現職。

がん治療用のウイルス製剤「テセルパツレブ」が、今年6月、脳腫瘍に世界初承認された。治療歴のある悪性神経膠腫(グリオーマ)が適応症だ。がんのウイルス療法の承認自体も国内初となる。米国でこの抗がんウイルスを開発し、日本での実用化を目指してきた東大医科研先端医療研究センター教授の藤堂具紀氏に、がんのウイルス療法とその可能性を聞いた。

がんを直接攻撃し免疫も 高める2段構え

─テセルパツレブはどういう治療薬ですか。

がん細胞でのみ増えるG47Δ(デルタ)というウイルスを腫瘍に注射することで、がん細胞を破壊させる、新しい概念の治療法です。口唇ヘルペスを起こす単純ヘルペスウイルスI型の3つの遺伝子を、がん細胞のみ攻撃するように改変して作製しました。

G47Δは、2段階の機序を介して、抗がん作用を発揮します。1段階目は、腫瘍にG47Δを注入してがん細胞に感染させると、がん細胞が直接破壊されることです。がん細胞内で増えたウイルスは、周囲のがん細胞にも感染しそれらの細胞も破壊していきます。G47Δは一定期間増えた後、免疫に排除されますが、繰り返し投与が可能です。

そして、2段階目は、抗がん免疫が引き起こされることで、投与したところから離れたところにあるがん細胞も攻撃するワクチン効果です。このワクチン効果が、G 47Δの特徴であり注目すべきポイントです。抗がん免疫が生じるのは、がん細胞で増えたG47Δを免疫が排除する過程で、がん細胞が免疫に非自己として認識され攻撃されるようになるからです。

G47Δは、がんの再発・転移のもととなり根治を阻む「がん幹細胞」も効率よく破壊することが分かっています。

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