中枢神経系の画像診断におけるMRIの役割は重要である。国内では1.5tesla(1.5T)MRIが普及台数としては最も多いが,ここ10年程度で3tesla(3T)MRIの普及が大きく進んでいる。3Tでは従来の1.5Tに比べ(1)信号雑音比の増加,(2)T1緩和の延長,(3)磁化率効果の増大,(4)共鳴周波数の増加,などの影響があり,これらを画質向上に寄与させることができる。
(1)は取得するMR信号の増加とほぼ同義であり,あらゆる撮像法の画質向上に直結する。(2)は非造影MRAや造影後T1強調画像で背景信号の抑制につながり,前者は血管信号,後者は増強像の明瞭化につながる。特にMRAでは,従来は描出が難しかった外側線条体動脈などの穿通枝の描出も可能とされている(文献1)。(3)では,T2スター強調画像や磁化率強調画像における微小出血や石灰化などによる局所磁場の乱れ(=信号低下)を鋭敏に検出でき,非常に微細な出血なども検出可能となる。(4)は主にMRスペクトロスコピーで検出される代謝産物のピークの分離の明瞭化につながる。
ただし,静磁場強度が高くなると内部の磁場均一性の保持が従来よりも困難となるため,装置からの正確な外部パルスの照射が難しくなる。しかし,この欠点も多チャンネル送信技術などによるハード面の技術革新により改善されつつある。今後も3T MRIの有用性はよりいっそう高まると予想され,臨床現場で活躍する診断モダリティとなることが期待される。
1) Chen YC, et al:AJNR Am J Neuroradiol. 2011; 32(10):1899-903.