風疹感染により発症した先天性風疹症候群(congenital rubella syndrome:CRS)の児を診療する目的で,日本周産期・新生児医学会理事会では「CRS診療マニュアル作成委員会(委員長:久保隆彦副理事長)」を立ち上げ,有識者,専門家を学会外部あるいは関連学会から招聘した。マニュアルは関連学会・団体の意見を参考に完成させた(http://www.jspnm.com/Teigen/docs/CRS ver7a.pdf)。
この診療マニュアルはCRSの児を実際に診療する産科医,小児科医のために作成したものである。近年,CRSの報告はきわめて少なくなってきており,周産期医はCRSの児の診療をあまり経験していない。そのため,通常の風疹感染と異なり,CRS児は長期間排ウイルス・感染性がある可能性があること,出生時に症状がなくても生後経過してから合併症の発症の可能性があることなどの重要な事項を知らない周産期医が多い。また,CRSの児が感染性ゆえに社会,保育所などから疎外,排除されないように,適切な対応法を記載した。さらに,母親,家族へのカウンセリング,行政,保健所,衛生研究所などの機関との連携,届出方法についても記載した。
診療マニュアルの最後にCRS児の家族会である「風疹をなくそうの会(hand in hand)」の連絡先を掲載した。CRS患者家族をピアサポートすることはとても大切なことである。CRSを診療する周産期医の先生方には,CRSを持つ保護者の皆様にこの患者家族会とコンタクトをとることを勧めていただきたい。