1960年代から再建外科領域においては,失われた組織を再建するために筋肉と皮弁を一塊にした筋皮弁の移植が行われてきた。この方法は大きな移植片が確実な血行を持つ利点はあるが,移植片採取部の筋肉が犠牲となる欠点があった。腹部の皮弁を採取する時は腹直筋が犠牲となり,背中から皮弁を採取する時は広背筋を犠牲にする必要性があり,時として脱腸や背中の陥凹変形が後遺症となることがあった。
1985年頃に筋肉内の穿通枝を剥離して筋肉を温存する穿通枝皮弁が開発された(文献1)。多くの筋皮弁で筋肉を犠牲にしなくとも,筋皮弁と同程度の面積が生着することがわかった。そこで1990年以降は,頭頸部癌切除例では大腿部からの穿通枝皮弁が(文献2,3),乳房切除後は腹筋を温存する腹部穿通枝皮弁が(文献1),四肢の外傷性組織欠損には四肢の穿通枝皮弁が用いられ,これらの欠損が容易に修復可能となっている。
これらの穿通枝は直径0.5mm前後である。最近では血管縫合も可能なため,皮弁とともに栄養血管を切り離して別の部位に移植して,その部位で顕微鏡下で血管縫合をする遊離穿通枝皮弁による再建術もなされ始めている。この方法は患者にとって低侵襲であるのみでなく,医師にも大きな利点がある。つまり,これまで筋皮弁で8時間を要していた手術が,穿通枝皮弁を用いることで3時間で終了する時代になりつつある。
1) Koshima I, et al:Br J Plast Surg. 1989;42(6): 645-8.
2) Koshima I, et al:Plast Reconstr Surg. 1993;92 (3):411-20.
3) Koshima I, et al:Plast Reconstr Surg. 1993;92 (3):421-8