パーキンソン病(PD)は,中脳黒質ドパミン神経細胞が比較的選択的に変性脱落することによって様々な症状を呈する。これまでわが国では,脳内のドパミンの減少を可視化することが難しかったが,2014年から,線条体のドパミン神経終末に存在するドパミントランスポーター(DAT)を標識してSPECTを行うことが保険適用上可能となった。今回,わが国で行えるようになったのは[123I]FP-CITを用いた検査である。
本法は線条体におけるドパミン神経の終末を標識することで,ドパミン神経が減少している疾患(PD,レビー小体型認知症,進行性核上性麻痺,多系統萎縮症など)と,ドパミン神経が減少せずにパーキンソン症候群を呈する疾患(本態性振戦,正常圧水頭症,薬剤性パーキンソニズムなど)を鑑別するために有用な検査である(文献1)。また,服用中の抗パーキンソン病薬による影響を受けにくい検査でもある。
しかし,線条体のドパミン神経終末が減少している疾患間での鑑別には有用ではなく,その場合には臨床症状やそのほかの検査を組み合わせて診断する必要がある。さらに病初期の段階で臨床的にPDと診断された症例の約5~15%ではDAT-SPECTで異常を示さず,scans without evidence of dopaminergic deficits(SWEDDs)と呼ばれる群もあり(文献2),検査結果の解釈には注意を要する。
1) Bajaj N, et al:J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2013;84(11):1288-95.
2) Schwingenschuh P, et al:Mov Disord. 2010;25 (5):560-9.