電気けいれん療法は,自発性けいれんや薬物誘発性けいれんが精神症状を軽減するという観察をもとに,1938年にイタリアで確立された治療法である。脳に発作性放電が生じることが治療効果に結びつくが,その作用機序はいまだに不明である。1990年頃からしだいに修正型電気けいれん療法(modified electroconvulsive therapy:mECT)が普及しはじめ,安全性が飛躍的に向上し,現在ではそれが主流となっている。
修正型では,麻酔科医の協力を得て,静脈麻酔薬によって軽く麻酔した後に,筋弛緩薬を投与して全身の筋を弛緩させる。その上で脳に通電するため,発作性放電が生じても全身性のけいれんは生じず,咬舌,骨折,脱臼などのけいれん発作に付随する有害事象の生じる心配がない。麻酔科医による全身管理のもとで施行されるため,術前後に不測の事態が生じても適切に対応できる。
治療は通常,2~3日おきに数回~10回程度施行する。通電直前の出来事に関し逆行性健忘が生じることがあるが,記銘障害や記憶障害が後々残るということはない。
薬物療法が発展した現在も,この古い治療法はまだ過去のものにはなっていない。それどころか,修正型に洗練されて,ますます存在意義を増している。精神病症状や緊張病症状を伴う重症うつ病や緊張型統合失調症では,薬物療法以上の有効性と即効性と安全性を示す。一部の症例では,再発予防のための維持療法としても使用されている。