2011年,National Institute on Aging-Alzheimer’s Associationにより診断基準が改定され,preclinical Alzheimer’s disease(preclinical AD)が定義された(文献1)。認知機能正常の健常成人にアミロイドβ蛋白の蓄積が髄液検査やPET検査で証明される病態を示している。
この概念はそれに先立って行われていたWorld Wide Alzheimer’s disease Neuroimaging Initiativeという巨大プロジェクトによりアミロイドβ蛋白の蓄積が,実はアルツハイマー病(AD)発症の10~20年前から始まっていることが明らかになったことに起因する。さらに,軽度~中等度のAD患者に対するアミロイドβ蛋白蓄積阻止を目的とした免疫療法のいくつかについて,アミロイド蓄積は減少させているにもかかわらず有効性に乏しいということが報告された(文献2~4)。
そこで現在欧米では,preclinical ADを対象としたアミロイド免疫療法の2つの試験が開始されようとしている。ひとつは家族性ADの遺伝子を保有しているが未発症である,主に30~40代の保因者を対象としたDIAN試験である。もうひとつはアミロイドイメージングによりアミロイドβ蛋白蓄積が証明された75歳以上のpreclinical ADを対象としたA4試験である。本試験は観察期間が数年になるが,アミロイド仮説に基づいたADの根本治療となることが期待されている。
1) Sperling RA, et al:Alzheimers Dement. 2011;7 (3):280-92.
2) Salloway S, et al:N Engl J Med. 2014;370(4): 322-33.
3) Doody RS, et al:N Engl J Med. 2014;370(4): 311-21.
4) Doody RS, et al:N Engl J Med. 2013;369(4): 341-50.