最近のリンパ浮腫の治療はこれまでと大きく変わりつつある。その理由は微小外科手術の進歩によって0.5mmのリンパ管と静脈を吻合することができるようになったためと,浮腫の発生がリンパ管平滑筋細胞の機能障害に起因することが判明したためである(文献1)。リンパ管平滑筋細胞の機能は,リンパ管の閉塞が発生(リンパ節郭清)したあと早い時期に失われることがわかっている。そこで,平滑筋細胞を温存するためにリンパ節郭清後早期に発生したリンパ浮腫に対しても,リンパ管と静脈の吻合を行う早期リンパ管静脈吻合術がなされつつある。
これまでに報告されたものでは,完治例も出始めている。既に平滑筋細胞が変性した中等症~重症のリンパ浮腫でもリンパ管静脈吻合を行い,術後圧迫療法を行うことによって還流機能をある程度回復させることができる。これによって蜂窩織炎発症の回数が減少したり,その後の浮腫の進行が停止することが報告されている。
リンパ管静脈吻合術は50μm(1/20mm)の縫合針を用いるため,箸文化のない欧米人にとっては技術的に難しいようである。そこで,欧米ではリンパ浮腫に対しては鼠径部や鎖骨上窩のリンパ節に栄養血管を付けて四肢に移植し,その栄養血管を吻合する方法がなされており(文献2),この方法でも良好な結果が報告されている。ヒトにおけるICG蛍光色素注入法によって,リンパ節にもリンパ液の還流機能があることも確認されている。
1) Koshima I, et al:Plast Reconstr Surg. 1996;97 (2):397-405.
2) Lin CH, et al:Plast Reconstr Surg. 2009;123 (4):1265-75.