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時間治療の勧め

No.4716 (2014年09月13日発行) P.52

藤村昭夫 (自治医科大学臨床薬理学教授)

登録日: 2014-09-13

最終更新日: 2016-10-26

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様々な生体機能に日内リズムが存在しているが,その影響を受けて,治療薬の有効性や安全性が投与時刻によって異なることがある。この点を明らかにする研究分野を「時間薬理学」という。さらに,発症や症状の増悪に日内リズムを認める疾患があり,疾患の日内リズムおよび薬物の時間薬理学的特徴を考慮に入れて用法・用量を決めることにより薬物の適正使用が可能になる。これを「時間治療」という。これまで高血圧,気管支喘息,悪性腫瘍などの薬物療法に時間治療が取り入れられている。以下に,高血圧治療に用いられているアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬の時間治療を紹介する。
ACE阻害薬が朝投与されている患者は多いが,このような患者の10~20%に乾咳が出現する。この有害反応が出現すると直ちに他の降圧薬に変更することが多いが,投与時刻を変更するのみで乾咳が消失したり軽減することがある。筆者らは,ACE阻害薬エナラプリルを1日1回朝投与中に乾咳を認めた患者に対して1日1回夕投与に変更したところ,84%の患者で乾咳は消失あるいは軽減し,乾咳が増悪した患者はいなかった(文献1)。以上のように,ACE阻害薬による乾咳発症率は投与時刻によって異なるが,これは乾咳の原因である血中ブラジキニン濃度が朝投与時に著しく上昇するためである(文献2)。
このように,時間治療は安全性や有効性に優れた薬物投与法であり,薬物を適正に使用するための方策の1つである。

【文献】


1)Fujimura A, et al:Jpn J Clin Pharmacol Ther. 1999;30(5):741-4.
2)Sunaga K, et al:Eur J Clin Pharmacol. 1995;48◆(6):441-5.

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