診療ガイドラインとは,医療者と患者が特定の臨床状況において適切な決断をくだせるよう支援する目的で,体系的な方法に則って作成された文書をいう(文献1)。
2006年に米国甲状腺学会から「甲状腺腫瘤と甲状腺分化癌に対するガイドライン」(2009年改訂,2014年再改訂予定)(文献2)が発表された。わが国では放射性ヨウ素治療が可能な施設が限られているなど,欧米とは異なった特殊性もあり,独自のガイドラインが切望されていた。そこで2008年に,日本内分泌外科学会と日本甲状腺外科学会が合同で,甲状腺腫瘍診療ガイドライン作成委員会を設立,ガイドライン作成に着手し,2010年に日本独自のガイドラインが発表された。
『甲状腺腫瘍診療ガイドライン』(文献3)は,実地臨床で遭遇することの多い項目にCQ(クリニカル・クエスチョン)を想定している。甲状腺腫瘍の診療に関する臨床試験は,世界的にみても質の高いものの少ないのが現状である。しかし,合計8項目において推奨グレードA(実地臨床で行うことを強く推奨する)が記載されている。
2014年7月現在,本ガイドラインの改訂に取りかかっている。本ガイドラインが甲状腺腫瘍の実地臨床において,均質かつ良質の医療の実現に寄与することを願っている。
1) 福井次矢, 他 編:Minds 診療ガイドライン作成の手引き 2007. 医学書院, 2007.
2) Cooper DS, et al:Thyroid. 2006;16(2):109-42.
3) 日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会, 編:甲状腺腫瘍診療ガイドライン 2010年版. 金原出版, 2010.