既に重症化した四肢のリンパ浮腫に対しては,理学療法もリンパ管静脈吻合術も大きな効果は得られにくい。これはリンパ管の平滑筋細胞の変性によるリンパ液の還流機能不全が起こっているためと考えられている(文献1)。このような重症リンパ浮腫に対して欧米では,リンパ管静脈吻合術よりもむしろ栄養血管をつけたリンパ節移植がなされてきた(文献2)。
しかし,鼠径リンパ節や腋窩リンパ節を用いると,ドナーである健常な手足に浮腫が発生することがある。そこで最近は,還流機能を再建するために正常な機能(平滑筋)を有するリンパ管を含む組織を健常部から採取し,病変部に移植する機能再建術がなされている。
移植片内の平滑筋細胞を生かすためにはリンパ組織の微小な栄養血管を吻合する必要があるが,最近の超微小血管吻合法を用いれば生きたリンパ組織移植が可能となっている。機能を持った正常なリンパ管移植術,リンパ管静脈吻合術,リンパ液貯留により既に肥大化した腹部や下肢の脂肪吸引術や部分的脂肪切除術などを複合的に用いれば,進行した重症リンパ浮腫例であっても,これまでの単一の治療法に比べて著明な効果が得られることがわかりつつある。リンパ組織採取部の浮腫もほとんど生じないことが判明している。
1) Koshima I, et al:Plast Reconstr Surg. 1996;97 (2):397-405.
2) Becker C, et al:Ann Surg. 2006;243(3):313-5.