加齢に伴い睡眠障害は増え,70歳以上の高齢者では,男性の20~30%,女性の30~40%に睡眠障害の訴えがあり,10~20%は睡眠薬を内服している。多剤併用が増加傾向にあり,厚生労働省は,適正使用を呼びかけるとともに,2014年4月より外来診療で,抗不安薬か睡眠薬を1回で3種類以上処方した場合,診療報酬を請求できなくし,処方箋料も減額するシステムに改定し,減薬を勧めている。
以上のような背景もあり,日本睡眠学会では「睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン」を診療指針として,ホームページで公開している(http://www.jssr.jp/data/pdf/suimin yaku-guideline.pdf)。医療従事者だけでなく,患者向けの勧告(推奨)も併せて解説しており,睡眠薬の減量・中止法についても概説している点が新しい特徴である。
10年前と比較して,睡眠専門の外来が増え,睡眠薬の選択肢も増えた。日中傾眠,転倒といった副作用が少なく,依存しにくい非ベンゾジアゼピン系睡眠薬やメラトニン受容体作動薬が新たに発売された。
「不眠」の訴えがあると,すぐに睡眠薬処方という判断をしてしまいがちである。詳しく問診すると,12時間床にいて6時間しか眠れないという睡眠障害の訴えの患者もおり,睡眠状態の誤認がないか確認した上で,まずは,生活指導を行うことが基本である。必要な患者に適切な睡眠薬を処方し,症状が改善したら減量・中止するものと,医療従事者も患者自身も同じ認識を持つことが,適切な睡眠障害の診療につながるであろう。