全身性強皮症(SSc)は,皮膚および内臓の線維化を特徴とする疾患である。SScは,びまん皮膚硬化型と限局皮膚硬化型の2つに病型分類され,抗Scl-70抗体は前者で,抗セントロメア抗体は後者で検出される。2010年5月,強皮症の診断・病型分類に有用な自己抗体である抗RNAポリメラーゼ(RNAP)Ⅲ抗体の検査薬が新たに保険収載された。
真核生物のRNAPは3種類あり,RNAPⅢはtRNAや5S rRNAなどの転写を行う。1993年,KuwanaらによりSSc患者血清中には複数のRNAPを認識する自己抗体が存在することが報告された(文献1)が,その後の検討により,RNAPのⅢaサブユニットを認識することがSScに特異的であることが示された。さらに,Kuwanaらは簡便な測定法を確立し(文献2),(株)医学生物学研究所がこれを応用して,抗RNAPⅢ抗体測定キットを開発・商品化した。
このキットを用いた性能評価試験では,SScにおける抗RNAPⅢ抗体の特異度は98.8%ときわめて高かった。また,抗RNAPⅢ抗体はSSc患者の10.7%で陽性であり,びまん皮膚硬化型に高頻度でみられた。さらに,抗RNAPⅢ抗体陽性SSc患者は,突然の高血圧と急激な腎障害をきたす腎クリーゼを併発しやすいことが明らかとなった(文献3)。したがって,抗RNAPⅢ抗体が検出されたSSc患者には血圧自己測定を指導し,腎クリーゼの早期発見に努める必要がある。
1) Kuwana M, et al:J Clin Invest. 1993;91(4): 1399-404.
2) Kuwana M, et al:Arthritis Rheum. 2005;52(8): 2425-32.
3) Satoh T, et al:Rheumatology (Oxford). 2009;48 (12):1570-4.