2015年4月より,これまでの「疫学研究に関する倫理指針」,「臨床研究に関する倫理指針」が統合され,「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」(文献1)に基づいて行うことが求められている。
主な変更点では,「侵襲」がかなり明確に定義された。「精神的侵襲」への言及がなされ,「研究目的に造影剤を使うMRIを施行」も侵襲と定義された。インフォームド・コンセントを受ける能力を欠くと客観的に判断される研究対象者(小児など)に対し,その理解力に応じたわかりやすい言葉で説明をするインフォームド・アセントも規定されている。近年のデータの信頼性に問題のあった大規模臨床試験の事例の影響と考えられる特に注目すべき点は,侵襲のある介入研究にモニタリング(研究者によるデータなどの定期的な確認)が義務化され,必要に応じて監査(信頼性確保のための研究から独立したものによる調査)を行うことが求められるようになったことである(施行は2015年10月から)。
そのほか,改めて利益相反を正しく開示して,研究計画書に記載し対象者へ説明することや,介入研究はデータベース登録が求められていることはこれまで通りである。なお,研究目的でない純粋に患者への医療として行う場合は本倫理指針の適用外となるが,保険適用外の治療などでエビデンスが不十分な場合には,客観的な立場の倫理審査を受けて行うなどの配慮が必要と考える。また,再生医療新法により,自由診療においても法律で定義される再生医療はすべて審査が必要となる。
1) 文部科学省, 厚生労働省:人を対象とする医学系研究に関する倫理指針ガイダンス. 2015.