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臨床試験を「人体実験」と言われないために

No.4770 (2015年09月26日発行) P.57

小林真一 (昭和大学臨床薬理研究所所長)

登録日: 2015-09-26

最終更新日: 2016-10-26

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我々の臨床試験の歴史の中で,いわゆる「人体実験」と言われる非人道的,非倫理的な臨床試験が行われたことは既に知られている。そこで,現在汎用されている臨床研究,臨床試験,治験と人体実験とはどこが違うのかを,我々は明確に説明できなくてはならない。
「臨床研究」とは人を対象とするすべての医学研究であるが,その中で介入試験などは「臨床試験」である。さらに,その中で医薬品医療機器等法(旧薬事法)に則り承認申請を得るためのものが治験(製薬企業主導または医師主導)である。これらの臨床試験と「人体実験」の違いはわずか4点の差異である。その4点とは,(1)目的の適正さ,(2)方法の適正さ,(3)倫理委員会の承認取得,(4)被験者からの同意取得,である。
まず「目的」であるが,社会的有用性が重要である。なぜならば,研究の成果は社会の利益に貢献する必要があるからである。「方法」の適正さは,臨床試験計画書(プロトコル)に記載され科学的,倫理的また信頼性のある方法であることが求められる。そして,この適正さは研究者から独立した委員で構成される「倫理委員会」で「目的」と同様に審議される。最後の被験者からの「同意取得」は最も重要な倫理的事項である。なぜならば,同意取得とは被験者の人格(人権)の尊重のために行われる手続きであるからである。被験者(患者)の人格(人権)の軽視は医療人としては絶対にしてはならないことである。
以上の4点が違法性の阻却にもつながり,1つでも欠けると「人体実験」と批判されるのである。

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