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口唇口蓋裂における歯肉骨膜形成術の実施時期

No.4770 (2015年09月26日発行) P.57

本多孝之 (岩手医科大学形成外科)

柏 克彦 (岩手医科大学形成外科特任教授)

小林誠一郎 (岩手医科大学形成外科教授)

登録日: 2015-09-26

最終更新日: 2016-10-26

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口唇口蓋裂の治療において,歯槽部の顎裂に対しては現在まで,学童期(混合歯列期)における自家骨移植術が標準的な治療とされている。その理由は,早期の手術操作が上顎前歯部の発育障害の原因となること,また思春期での骨移植は生着率が学童期に比べ劣るためであった。
1967年にSkoogは,生後3~6カ月時の口唇形成術時に顎裂閉鎖を行う歯肉骨膜形成術(primary gingivoperiosteoplasty)を,また1972年にRitsila and Rintalaは,骨膜移植による顎裂閉鎖を報告した。いずれの報告でも,骨移植を行うことなしに顎裂部に骨が形成されることが報告されたが,その後,上顎発育抑制が報告され,しだいに行われなくなってきた。
1998年にSantiagoら(文献1)は,受動的な顎矯正により顎裂幅をあらかじめ狭めた上で,最小限の歯肉剝離による顎裂部閉鎖の報告を行い,16例20側の顎裂のうち12側で学童期の骨移植手術が不要であったと報告した。
この報告を受けて,わが国でも術前顎矯正を行った上で歯肉骨膜形成術を,初回口唇形成術と同時に行う施設がみられるようになってきた。現時点では思春期後期まで経過を観察しえた症例は少なく,顎発育に対する評価はいまだ定まっているとは言いがたいが,少なくとも学童期での骨移植を回避することができたという報告がなされはじめている。

【文献】


1) Santiago PE, et al:Cleft Palate Craniofac J. 1998;35(1):77-80.

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