No.4776 (2015年11月07日発行) P.58
田上恵太 (国立がん研究センター東病院 緩和医療科)
木下寛也 (国立がん研究センター東病院緩和医療科科長)
登録日: 2015-11-07
最終更新日: 2016-10-26
終末期のがん患者や家族の生活の質(QOL)の向上のために,医療やケアの質の評価は重要である。実際の受け手である患者の評価が最も信頼できるが,終末期のがん患者は全身状態が悪いことが多く,意識障害や認知障害が患者自身の評価を困難にする。欧米では,1960年代から死亡届などをもとにした遺族調査が行われている。
わが国では1999年と2002年に,ホスピス・緩和ケアを受けた遺族を対象に調査が行われた。その中で,ケアに対する評価尺度,遺族による終末期のQOLの評価尺度,遺族の介護経験の評価尺度が開発され,構造・過程・成果の3側面から終末期の医療やケアの質を評価する調査が行われた。
その後,全国的調査を継続して行うため,遺族によるホスピス・緩和ケアの質の評価に関する研究が2007年(J-HOPE研究),2010年(J-HOPE2研究),2014年(J-HOPE3研究)に実施された(文献1)。J-HOPE2研究では,104施設の緩和ケア病棟と15施設の在宅ケア施設,24施設の一般病院で,がんで亡くなられた計1万3477人の遺族に調査票が送付された。J-HOPE2研究の結果のうち10本程度の論文が海外雑誌に掲載され,国際的にも高い評価を受けている。
1) J-HOPE.
[http://plaza.umin.ac.jp/jhopestudy/]