アレルギー性鼻炎(AR)の診断は,明らかな症状を呈し,鼻汁好酸球検査,皮膚テスト(あるいは血清特異的IgE抗体検査),誘発テストのうち2項目以上が陽性ならば確定される。また,スギ花粉症では典型的な症状に加えて,皮膚テストあるいは血清スギ特異的IgE抗体が陽性ならば診断可能である。しかし,花粉飛散期に受診する症例の中には,明らかにAR症状があるにもかかわらず,皮膚テストや血清特異的IgE抗体陰性でスギ花粉症の診断に至らない場合が少なくない。
近年,海外において,草木花粉やダニに対する皮膚反応や血清特異的IgE抗体は陰性であるにもかかわらず,鼻汁中特異的IgE抗体が陽性である症例が少なからず存在することが報告され,局所アレルギー性鼻炎(local allergic rhinitis:LAR)という概念が提唱されている。鼻粘膜局所における特異的IgE抗体の産生については多くのエビデンスが存在しており,むしろ,血中特異的IgE抗体の多くは局所IgEが流出したものであるとされる。
LARがAR発症の初期段階なのか,あるいは両者は異なった病態であるのかは不明であるが,現実には重症度や治療方法で両者に大きな違いはない。わが国の国民病であるスギ花粉症にもLARが存在するかについては不明である。それを明らかにするにはスギ花粉エキスを用いた誘発テストが必須であるが,テストキットが市販されていない。また,鼻粘膜局所スギ特異的IgE抗体についてもいくつかの施設で同定が試みられているが,確立した方法はない。今後の実態解明が待たれる。