株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

てんかんと女性 【新規抗てんかん薬は胎児催奇形性率が低く,妊婦でも比較的安全】

No.4810 (2016年07月02日発行) P.52

西川典子 (愛媛大学薬物療法・神経内科准教授)

登録日: 2016-07-02

最終更新日: 2016-10-29

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

妊娠可能年齢にある女性に対して抗てんかん薬(AED)を投与する際には,てんかん発作の抑制だけでなく,妊娠・出産についてのカウンセリングが妊娠前から欠かせない。これまで,胎児が子宮内でAEDに曝露されたことによる影響は,催奇形性を中心に論じられてきた。しかし,最近は奇形という身体的障害だけでなく,認知行動機能障害も併発することが注目されている。
バルプロ酸(VPA)の子宮内曝露を受けた3歳児,6歳児の知能指数(IQ)がほかのAED曝露群に比較して有意に低下していたと報告(文献1)された。これは,VPA高用量群(800~1000mg以上)でより顕著であった。VPA曝露群では,他剤に比べて言語性IQの低下が目立った。また,VPA曝露群では自閉症スペクトラム障害の発症リスクが増加することも報告(文献2)されている。
近年,わが国でも新規抗てんかん薬の適応範囲が広がり,汎用性も高くなっている。中でも,ラモトリギン(LTG),ガバペンチン,レベチラセタム(LEV)は胎児催奇形性率が低く,妊婦でも比較的安全と考えられている。多くのてんかん患者では,妊娠中であっても治療薬の継続が必要であり,若年女性では,治療初期から妊娠・出産をふまえて,LTG,LEVを積極的に選択するべきである。
妊娠・出産におけるリスクの説明を十分に行うとともに,リスクを恐れて患者判断による短絡的な服薬中止をまねくことのないように,個々に適した指導が望まれる。

【文献】


1) Meador KJ, et al:Lancet Neurol. 2013;12(3):244-52.
2) Christensen J, et al:JAMA. 2013;309(16):1696-703.

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

関連物件情報

もっと見る

page top