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酒さ・酒さ様皮膚炎とニキビの病態 【酒さ・ざ瘡・酒さ様皮膚炎では
共有する病態が臨床症状の類似性に寄与】

No.4809 (2016年06月25日発行) P.55

山﨑研志 (東北大学大学院医学系研究科皮膚科学准教授)

登録日: 2016-06-25

最終更新日: 2016-12-16

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【Q】

「酒さ・酒さ様皮膚炎」と「ニキビ」の症状はなぜ似ているのでしょうか。東北大学・山﨑研志先生のご教示をお願いします。
【質問者】
千貫祐子:島根大学医学部皮膚科学講師

【A】

酒さは,顔面の紅斑(いわゆる赤ら顔),丘疹・膿疱を主症状とする慢性炎症性疾患であり,毛包・脂腺周囲を主体とした炎症反応が確認されます。酒さの病因・病態は不明とされていますが,臨床病態の観察から寒暖差,日光,刺激物,微生物などの複数の外的因子が増悪因子として認識されています。
酒さの病態の一部として,自然免疫機構の亢進,すなわち酒さ皮膚での自然免疫受容体TLR2の発現亢進と抗菌ペプチド・カセリサイディン(cathelicidin)の過剰な発現に伴う炎症反応惹起が関与していることが確認されています(文献1,2)。
ニキビ・痤瘡は,顔面の脂腺性毛包を主体とした慢性炎症であり,脂腺の活動が活発となる思春期以降に好発します。その炎症の一部にはアクネ桿菌いわゆるニキビ菌が関与しますが,その炎症反応は宿主がTLR2を介してアクネ桿菌を感知することに端を発します(文献3)。
ステロイドによる皮膚の副作用の一種として認識される酒さ様皮膚炎は,ステロイド外用薬や内服薬によって顔面に酒さと類似した紅斑や丘疹・膿疱を生じます。副腎皮質ステロイドは,表皮角化細胞にTLR2を誘導し,アクネ桿菌による表皮角化細胞からのTNFなどの炎症性サイトカイン誘導を増加させることがin vitroで確認されています(文献4)。
以上から,酒さ,痤瘡そして酒さ様皮膚炎では自然免疫系炎症という観点で共有する病態があり,この分子病態の共通性が臨床症状の類似性に寄与していると考えられます。

【文献】


1) Yamasaki K, et al:Nat Med. 2007;13(8):975-80.
2) Yamasaki K, et al:J Invest Dermatol. 2011;131(3):688-97.
3) Kim J, et al:J Immunol. 2002;169(3):1535-41.
4) Shibata M, et al:J Invest Dermatol. 2009;129(1):375-82.

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