2013年5月,厚生労働省は,「添付文書の使用上の注意に自動車運転等の禁止等の記載がある医薬品を処方又は調剤する際は,医師又は薬剤師からの患者に対する注意喚起の説明を徹底させること」と通知した。
該当する薬剤は,抗不安薬,睡眠導入薬,抗精神病薬,抗てんかん薬,抗ヒスタミン薬,抗パーキンソン病薬,抗コリン薬,抗不整脈薬,鎮咳薬,抗菌薬,止瀉薬など約500種類に上り,神経領域の薬剤は95%以上が運転禁止薬である。これらの薬剤を服用している膨大な数の患者の運転を一律に禁止することは社会の混乱をまねき,現実的ではない。
抗てんかん薬ガバペンチンを例にとってみると,添付文書では「傾眠,注意力・集中力・反射運動能力等の低下が起こることがあるので,本剤投与中の患者には自動車の運転等,危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意すること」とある。道路交通法では,てんかん患者は抗てんかん薬の服薬で発作が十分に抑制されていれば運転が可能となっているが,添付文書上では調剤・処方時に「抗てんかん薬を服薬しているときは運転しないように」と指導を受ける矛盾を抱えている。
FDAのLabelでは“they should be advised neither to drive a car nor to operate other complex machinery until they have gained sufficient experience on gabapentin to gauge whether or not it affects their mental and/or motor performance adversely.”とあり,自動車,機械運転の禁止を明記しているものの,下線部のようなただし書きを設けている。
【解説】
西川典子 愛媛大学薬物療法・神経内科准教授