【Q】
両側唇裂に対する口唇形成術はいまだに困難が多い手術です。一方,唇裂を扱う形成外科医にとっては非常に挑戦的な手術でもあります。現在,両側唇裂に対する口唇形成術は一期的な手術が主流になってきていると思います。しかし,非対称な裂型を持つ両側唇裂症例に対する手術方針には多くの議論が残っています。特に片側が完全唇顎口蓋裂で対側が瘢痕型唇裂である場合,二期的に行うのがよいのか,一期的に行うほうがよいのか,私も非常に迷いながら診療しています。非対称な裂型を持つ両側唇裂症例への口唇形成術に対してどのような方針で治療にあたるのがよいのでしょうか。長期の成績からみた現在の考え方を,北九州市立八幡病院・田崎幸博先生にご教示頂きたいと思います。【A】
両側唇裂の裂型が非対称的な症例に対しては,まず,両側唇裂としての手術を行うのか,片側唇裂としての手術を行うのかを考えます。当科では,軽症な側の裂の程度によってどちらかを選択するようにしています。たとえば一側が完全唇裂で,対側が不完全唇裂であれば,両側唇裂としての一期的な手術(当科ではDeHaan変法)を行いますが,軽症な側が痕跡唇裂の場合は,完全唇裂の側への片側唇裂手術(当科では小三角弁法)を行い,これに痕跡唇裂の手術を一期的あるいは二期的に加えます。