HIV感染症は検査を行わなければ診断できない
HIV検査を行う際には本人から同意を取得する
HIVスクリーニングとしては,ウインドウピリオドの短い第4世代検査(抗原・抗体検査)が推奨される
性感染症の既往・現症がある場合には,HIVスクリーニング検査は保険適用となる
ヒト免疫不全ウイルス(human immunodeficiency virus:HIV)感染症には特異的な所見がなく,診断のためにはHIV検査が必要である。臨床現場でHIV感染症を疑うポイントについては前項で述べられているので,本稿では担当医が必要と考えた際にどのように実際の検査を進めるかについて,要点を記載する。
米国では,本人の拒否がなければ13~64歳の検査歴のない病院受診者全員にHIVスクリーニングを行う(オプトアウト)ことが推奨されている1)。しかしわが国では現在,本人に説明し同意を得てから検査を行う(オプトイン)のが原則である2)。B型肝炎ウイルス(HBV)・C型肝炎ウイルス(HCV)・梅毒のスクリーニングが広く行われている現状においてHIVのみ特別に扱う医学的合理性はないが,同意を得ることなく行われたHIV検査で解雇など実生活上の不利益を被る事例や,HIV感染者の診療拒否が残念ながら散見される以上,この対応は現状やむをえないものであろう。同意は書面によるものである必要性はないが,同意を得たことをその時点で確実に診療録に記載しておくことが望ましい。
例外として,たとえば発熱を伴う意識障害で搬送された症例に細胞性免疫不全の存在を疑う所見がみられる場合など,本人の同意を得ることができず,かつ検査結果が治療方針に大きく影響する場合には医師の判断で検査を行うことも認められる。本人の意思が確認できない場合に家族から同意を取得すること(小児症例を除く)は,プライバシーの観点から好ましくない。
HIV検査の際に同意取得が必要とされることは,「面倒」「検査へのハードルを上げている」と感じられるかもしれない。しかし,HIV検査を勧められたことが自身のHIV感染リスクを初めて認識するきっかけだった,という感染者は一定数存在する。仮に今回は検査を断られたとしても,それがきっかけで別の検査機会につながるかもしれない。可能性があればためらわず,積極的に検査を勧めて頂きたい。
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