▶高齢者の運転による死亡事故が最近、相次いで報道されている。事態を受けて政府は15日、「高齢運転者による交通事故防止対策に関する関係閣僚会議」を官邸で開催。安倍晋三首相は高齢者の移動手段の確保など、社会全体で高齢者の生活を支える体制の整備を進めると同時に、さらなる対策を検討する考えを示した。
▶改正道路交通法により、75歳以上の運転者が免許更新時に認知機能検査で「認知症の疑いあり」と判定された場合の医師診断書提出が来年3月から義務化される。日本老年精神医学会は15日、「改正道路交通法施行に関する提言」をホームページで発表した。提言では①高速道路パーキングエリアでの逆送防止用ゲート設置や、自動ブレーキ、ペダル踏み間違い防止装置の標準装備化、②地域の実情に配慮した交通支援システムの開発・普及─などを提案。その上で、「認知機能の低下による運転不適格者であることと『認知症』と診断されていることは必ずしも同義ではない」として、エビデンスの集積と制度改正後の事故事例分析に基づき検討すべき課題と指摘している。
▶制度改正の影響について、日本医大武蔵小杉病院認知症センター部長の北村伸氏は本誌4775号のインタビューで、専門医だけで対象者全員を診ることは困難なため、運転可能な軽度認知障害か否かの判断を含めた認知症の診断が非専門医にも求められると指摘。円滑な制度施行の鍵は「非専門医の先生に認知症の診断力を向上してもらうことに尽きる」と強調している。不幸な交通事故を減らすためには、非専門医が認知症サポート医養成研修を受講しやすくするなどの環境整備が不可欠だ。