厚生労働省は5日、厚生科学審議会感染症部会の「薬剤耐性(AMR)に関する小委員会」(委員長=渡邉治雄国際医療福祉大院教授)の初会合で、外来で診療に携わる医療従事者向けの「抗菌薬適正使用の手引き」(第1版)のコンセプト案を提示した。
手引きは、今年4月に政府が策定した「AMR対策アクションプラン」(用語解説)に基づくもの。抗菌薬を使うべきか否かを迷う状況での助けになるよう、診断方法や鑑別診断、治療方針、患者・家族への具体的な伝え方を記載。第1版では、基礎疾患のない上気道感染症(感冒)と急性下痢症の2疾病を取り上げ、重点的に解説する。
委員からは、基礎疾患があり入院している患者も対象とすべきとの指摘や、肺炎や尿路感染症について記載を求める声が上がった。厚労省は、手引きの具体的な内容は作業部会で検討し、議論の上で記載が必要と判断された疾病などについては、第2版から追加するとしている。
日本では、医療分野における抗菌薬使用量自体は多くないが、幅広い細菌に有効であるものが多いセファロスポリン、キノロン、マクロライドの使用割合が極めて高い。また、ヒトにおける薬剤耐性菌の検出割合についても、肺炎球菌ペニシリン非感受性率が48%、黄色ブドウ球菌メチシリン耐性率が51%(共に2014年)と、カルバペネム系抗菌薬以外は他国と比較して高いものが多い。そのため抗菌薬の適正使用推進により、これらの使用量・使用割合や薬剤耐性率を減らすことが重要とされている。