日本消化器病学会の「胃食道逆流症(gastroesophageal reflux disease:GERD)診療ガイドライン 2015」では,プロトンポンプ阻害薬(proton pump inhibitor:PPI)抵抗性GERDが比較的大きく取り上げられています。
このようなPPI抵抗性GERDの患者は日常臨床ではどの程度いるのか,それらの患者にPPIの効果が低い理由,そしてそのような患者の治療について,日本医科大学・岩切勝彦先生に教えて頂きたいと思います。
【質問者】
三輪洋人 兵庫医科大学内科学消化管科主任教授
2015年に改訂された「胃食道逆流症(GERD)診療ガイドライン 2015」では,PPI抵抗性GERDの定義は「標準量のPPIを使用しても粘膜傷害,または症状がとれないもの」とされています。GERDには食道粘膜傷害を有する逆流性食道炎と粘膜傷害を認めず逆流症状のみを有する非びらん性胃食道逆流症(non-erosive reflux disease:NERD)が存在することから,PPI抵抗性GE RDは,PPI抵抗性逆流性食道炎とPPI抵抗性NERDに分類されます。
逆流性食道炎の食道粘膜傷害の原因は食道内の過剰な酸曝露であることから,PPI抵抗性逆流性食道炎は標準量のPPIで食道内の酸曝露時間が十分に抑制されていないことを意味します。軽症逆流性食道炎患者では標準量のPPIによりほぼ100%の治癒がみられますが,重症逆流性食道炎での治癒率は80~85%であることから,PPI抵抗性逆流性食道炎の頻度は15~20%となります。近年,このPPI抵抗性逆流性食道炎の頻度の増加が報告されてきています。
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