編著: | 榊 信廣(公益財団法人早期胃癌検診協会理事長) |
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判型: | B5判 |
頁数: | 244頁 |
装丁: | 2色部分カラー |
発行日: | 2020年10月31日 |
ISBN: | 978-4-7849-4497-2 |
版数: | 第3版 |
付録: | 無料の電子版が付属(巻末のシリアルコードを登録すると、本書の全ページを閲覧できます) |
◆ピロリ菌は胃炎だけでなく様々な病変の原因となります。そして、ピロリ菌を除菌することで、消化性潰瘍が治り胃癌発症を抑制できるという事実はひろまってきています。ピロリ菌除菌が普及するということは、胃癌撲滅につながっていくということにもなります。
◆本書は、基本となる保険で認められたピロリ菌の診断・治療の解説から、それらが有効な疾患、さらには保険適応外の除菌治療まで詳しく解説。患者さんからよくある質問をまとめた項目も充実しております。
◆好評を博したjmedmook「ピロリ除菌治療A to Z」の書籍化第3版!各種ガイドラインに準拠した最新データを網羅!タイトル通り「パーフェクトな本」として先生方のお役に立つこと間違いなしの1冊です!
第1章 除菌治療を行うために必要な知識─ 保険診療で認められた除菌治療が基本!
1 除菌治療が必要な人は? ヘリコバクター・ピロリ胃炎
2 ピロリ感染を診断する 侵襲的検査法,非侵襲的検査法と診断の補助
3 除菌治療の初回の方法 保険認可の3剤併用療法
4 除菌判定の時期と方法 尿素呼気試験,便中ピロリ抗原検査を中心に
5 除菌治療に失敗したら二次除菌治療 保険認可の二次除菌治療
6 治療前に患者さんに説明すべきこと 成功率と副作用,そして除菌後の注意
7 保険診療の実際 レセプトの書き方
第2章 除菌治療の効果
1 ピロリ胃炎の内視鏡診断と除菌後の変化 「胃炎の京都分類」に基づいて
2 潰瘍の治療はこう変わった! 潰瘍ガイドラインでの除菌治療の位置づけ
3 潰瘍であればすべて除菌治療が有用か? NSAIDs・低用量アスピリン潰瘍でのピロリ除菌
4 胃MALTリンパ腫の除菌治療の問題点 遺伝子異常と長期予後
5 特発性血小板減少性紫斑病の治療 ピロリ陽性例では除菌が第一選択の治療
6 除菌治療で治る胃ポリープ 除菌治療で治るのは胃過形成性ポリープ
7 除菌治療と機能性ディスペプシア・胃食道逆流症 最近のエビデンス
8 その他,除菌治療が有効とされる疾患は? 有効性が報告されている鉄欠乏性貧血,パーキンソン病,糖尿病,心血管疾患,慢性蕁麻疹,片頭痛,遺伝性血管浮腫,中心性漿液性脈絡網膜症
第3章 除菌治療の応用
1 除菌療法の歴史的変遷 除菌率と安全性を考慮し選択されてきたレジメンの変遷
2 除菌治療と酸分泌抑制 P-CABの話題を加えて
3 一次・二次除菌治療に失敗したら,三次除菌 JAPAN GAST Study Group(JGSG),東京HP研究会の検討をふまえて
4 小児の除菌治療方法と対象疾患
5 小児の感染診断・除菌判定のポイントと感染予防の指導
6 高齢者,胃癌術後の患者,妊婦などのピロリ除菌治療 それぞれの特徴を理解して治療を行うために
7 ペニシリンアレルギー患者の除菌治療 薬疹がみられた例をどうするか?
8 除菌治療に伴う問題点 除菌に伴う副作用,除菌後の経過に注意
9 除菌後に逆流性食道炎は増加するか? 除菌後に発生する逆流性食道炎の多くは軽症だが,食道裂孔ヘルニアや胃粘膜萎縮が認められる症例では注意!
10 ピロリ菌の再出現 再燃か? 再感染か?
第4章 ピロリ菌とは?─患者さんの質問に答えるために
1「ピロリ菌ってどんな菌ですか?」と聞かれたら 電子顕微鏡で見るピロリ菌
2「ピロリ菌はどこにいるのですか?」と聞かれたら 顕微鏡で見た胃粘膜および胃粘液中のピロリ菌
3「いつ,どのように感染するのですか?」と聞かれたら 感染経路と主な感染年齢
4「ピロリ菌は悪い菌ですか?」と聞かれたら 「悪い菌です」と言える根拠
5「ピロリ感染はどのような疾患と関係しているのですか?」と聞かれたら ピロリ感染が引き起こす様々な疾患
6「ピロリ感染と胃癌は本当に関係しているのですか?」と聞かれたら 動物実験で証明されたピロリ感染・除菌と胃癌
7「除菌治療で胃癌の予防ができるのですか?」と聞かれたら 「はい,予防できます。ただし,除菌後も長期の内視鏡フォローアップが必要です!」
第5章 ピロリ除菌治療と胃癌
1 ピロリ菌の基礎知識 知っておきたいピロリ菌の細菌学的特徴
2 ピロリ感染・胃炎・胃癌の連鎖 ピロリ感染による胃炎と胃癌とはどのような関連があるのか
3 疫学的にみたピロリ感染症
4 除菌治療による胃癌の予防効果
5 ピロリ除菌による胃癌撲滅計画とWHOのがん研究機関(IARC)から発表された報告書 世界とわが国のピロリ除菌と胃癌撲滅へ向けての今後の方向性
6 除菌後に発見される胃癌の特徴と診断のポイント 除菌後のサーベイランスのために
7 除菌治療の胃癌リスク分類への影響 ABC分類は胃癌検診のgateway
8 ピロリ未感染胃に発生する胃癌の頻度と特徴 ピロリ菌の関与のない胃癌はあるか?
ピロリ除菌治療役立ちコラム1 ピロリ感染の診断と治療の保険承認の歴史
ピロリ除菌治療役立ちコラム2 除菌治療後に潰瘍が発生した?!
ピロリ除菌治療役立ちコラム3 いつからピロリ菌と呼ばれるようになったのか?
ピロリ除菌治療役立ちコラム4 検診受診患者の胃癌発見率からみた除菌治療の胃癌抑制効果
2015年初版の「ピロリ除菌治療パーフェクトガイド」の第3版を出版することになりました。最初は正確な知識に基づいた除菌治療を周知する本の企画でしたが,ピロリ除菌治療のすべてをパーフェクトに紹介する力作が並んだ本に成長いたしました。
第1章では保険診療での診断・治療法を,第2章では疾患別の除菌の効果を,第3章では除菌治療の応用を解説します。第4章ではピロリ菌の基礎知識,第5章は現在注目されている胃癌との関係を解説しました。日常診療で困った時の虎の巻としてだけでなく,教育や講演の資料としても活用頂ければ幸いです。
1983年のWarrenとMarshallの報告がすべての始まりですが,その直後から日本でもピロリ研究が開始されました。そして,ピロリ感染が萎縮性胃炎の原因であり,除菌治療で消化性潰瘍,過形成性ポリープ,MALTリンパ腫が治り,胃癌発生が抑制されることが証明されました。その魁の一人としては正式名称Helicobacter pyloriを使いたいのですが, 日本で普及しているピロリ菌の名称に本書では統一いたしました。
日本では2000年に消化性潰瘍患者の除菌治療が保険適応になり,2013年には胃炎患者への適応拡大がなされました。その結果,この20年で内視鏡でみる日本人の胃粘膜,そして胃病変は大きく変わりました。私が勤める早期胃癌検診協会でも,約70%であったピロリ現感染者は,今では約5%に減少しました。数%にみられていた胃・十二指腸潰瘍,過形成ポリープは稀な疾患になりました。除菌後胃癌は注目されていますが,胃癌も確実に減少しています。
近い将来,ピロリ菌は日本から撲滅され,国民病といわれた胃癌も激減することは間違いありません。ピロリ研究者として,その日が1日でも早く来るのを期待しながら,日常診療では除菌治療を続けています。
最後になりましたが,ピロリ菌研究の黎明期からHelicobacter pyloriフォーラムをはじめとする研究会を通じて交流を深めてきた執筆者の先生方,そして日本医事新報社の村上由佳さんに深く御礼申し上げます。