mucosa associated lymphoid tissue(MALT) リンパ腫は,悪性リンパ腫の中では低悪性度の腫瘍であり,一般的には進行が緩徐である。胃MALTリンパ腫の多くはHelicobacter pylori(H. pylori)に感染した胃に発生するが,近年は感染率の低下とともにH. pylori未感染者に発生するものが散見される。
腹部症状で発見されることは稀であり,上部消化管内視鏡検査で偶発的に発見されることが多い。
内視鏡所見は,平坦な褪色域や胃炎に類似した所見から,潰瘍や腫瘤を形成するものまで,非常に多彩である。診断には病変部からの生検が必須であり,免疫組織学的染色を加えリンパ腫の病型診断を行う。フローサイトメトリーや染色体・遺伝子検索も重要である。MALTリンパ腫で特に頻度が高い遺伝子異常はt(11;18)(q21;q21)転座で,その頻度は5~21%,ついでt(14;18)(q32;q21)転座で,1~5%と報告されている。
H. pylori感染診断は,治療の選択や治療抵抗性を判断する上で非常に重要である。H. pylori診断検査法はそれぞれに利点・欠点があるため,複数の検査法を組み合わせて正確に診断する。
限局期か進行期かの病期とH. pylori感染の有無により治療方針を決定する。胃に限局したMALTリンパ腫の60~80%程度は除菌のみで寛解するため,Lugano stage Ⅰ/Ⅱ1の限局期ではH. pylori除菌治療を第一選択とするが,H. pylori陰性例では除菌が奏効しないことが多い。進行期のMALTリンパ腫では,全身化学療法が推奨される。増悪やびまん性大細胞型B細胞リンパ腫への形質転換も懸念されるため,血液内科医や腫瘍内科医と連携して診療するとよい。
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