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医療観察法の現状と問題点 【対象者の多くが社会復帰を実現。ただ通院医療を担う病院の不足など課題は多い】

No.4839 (2017年01月21日発行) P.59

村松太郎 (慶應義塾大学医学部精神神経科准教授)

田口寿子 (国立精神・神経医療研究センター病院 司法精神科医長)

登録日: 2017-01-19

最終更新日: 2017-01-17

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  • 2005年7月より施行された「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」(医療観察法)は,わが国の歴史上,画期的な法律であると理解しておりますが,それだけにいっそう,施行されて初めて明らかになってきた点も多数あるのではないかと推測しております。医療観察法の施行から11年が過ぎて,現状と,見えてきた問題点にはどのようなものがあるのでしょうか。
    国立精神・神経医療研究センター病院・田口寿子先生にご回答頂きたく存じます。

    【質問者】

    村松太郎 慶應義塾大学医学部精神神経科准教授


    【回答】

    医療観察法は,統合失調症などの精神障害の影響によって殺人,放火,傷害などの重大な他害行為を起こし,司法から刑事責任能力がない(心神喪失)あるいは減弱している(心神耗弱)と認定された者(法では対象者と呼びます)に対し,同様の他害行為を起こさずに社会で生活できるよう,集中的,包括的な精神科医療を実施し,手厚い地域支援体制を構築することを目的とした法律です。

    法の施行後11年の経過を振り返って言えるのは,以前なら社会復帰が著しく困難だった対象者の多くが,地域生活を送れるようになっているということです。それは,特に通院医療のコーディネーターである保護観察所の社会復帰調整官,通院医療機関,通所施設,保健所などの行政機関,訪問看護ステーションなど,地域精神保健関係者の多大な努力に負うところが大きいと思います。また,多くの困難を抱える対象者の支援を通して地域関係者間の連携が密になり,そのネットワークが,同じ地域の,通常の精神障害者支援にも活かされていると聞いています。

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