ステロイド誘発性骨粗鬆症(glucocorticoid-induced osteoporosis:GIO)とそれに続発する骨折は,頻度・重症度ともに高い合併症である。GIOは,ステロイドの全身および局所の作用により,骨吸収亢進と骨形成低下を生じて引き起こされる1)。
かつてのGIOに対する薬物療法は,ビタミンD,Ca製剤,カルシトニンなどによる治療であった。骨量減少に対しては予防効果を得られるが,骨折予防に対する効果はなかった。しかし,骨吸収を抑制するビスホスホネート製剤であるアレンドロネートとリセドロネートが骨粗鬆症治療薬として登場し,さらにGIOに対する骨折予防効果が証明された。GIO治療においてこのインパクトは大きく,各国のガイドラインにおいて第一選択薬となっている。
筆者らは,血清可溶性RANKL濃度がGIOの予後予測に役立つ可能性を報告した2)。破骨細胞分化誘導因子であるRANKLは,GIOの成因に重要である。抗RANKL抗体のデノスマブは閉経後骨粗鬆症で有用性が示されており,GIOにおける効果が今後期待される。一方,骨形成を刺激するWntシグナルにはスクレロスチンなどの阻害因子が知られている。
将来は,骨形成を刺激する抗スクレロスチン抗体などもGIOの治療薬になりうるものと期待している。
【文献】
1) 金子開知, 他:日臨免疫会誌. 2011;34(3):138-48.
2) Kaneko K, et al:J Clin Endocrinol Metab. 2012;97(10):E1909-17.
【解説】
金子開知 東邦大学内科学講座膠原病学