アスベスト(石綿)による中皮腫や肺癌などの関連疾患を専門とするシドニー大学石綿疾患研究所(ADRI)。高橋さんは2月より同研究所の所長に就任する。これまで石綿関連疾患の診断法や治療薬開発に注力してきたADRIだが、高橋さんは「“伝統”をきちんと伸ばすのは当然の責務ながら、私の強みは国際協力。石綿関連疾患対策にグローバルヘルスの視点を持ち込みたい」と抱負を語る。
高橋さんが石綿関連疾患に関わり始めたのは1980年代後半。大学院生の頃、恩師と北九州の労働者の健康診断に回り、X線画像から石綿に曝露した人に特有の胸膜プラークの見つけ方や問診法を学んだ。職歴と胸膜プラークの関係をまとめた学会発表が新聞の1面を飾り、石綿問題の重大性を痛感。石綿関連疾患の研究に傾倒していった。
世界の状況を見て回るうちに「石綿の使用禁止とは産業構造の転換を迫ること。一国で解決できる問題ではない」と確信。2007年には、各国の石綿使用量と中皮腫死亡者数の相関をデータで示し、Lancet誌に発表。2015年には、フェローを務める国際学術団体で「石綿問題は国際的に取り組むべき公衆衛生の課題」とする声明を取りまとめた。
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