【質問者】
元村尚嗣 大阪市立大学大学院医学研究科形成外科学 教授
熱傷や外傷,手術,さらにはBCG接種やピアスなどによる傷が,赤く隆起するケロイドや肥厚性瘢痕(以下,ケロイド)と呼ばれる状態となることがあります。病理学的に言えば,真皮網状層が過剰に増殖した状態であり,膠原線維だけでなく毛細血管や末梢神経線維の増殖を伴い,見た目の悪さだけでなく,時に眠れないくらいの痛みや痒みを呈し,大変苦痛を伴う状態です。
「ケロイド」の理解はここ10年で劇的に深まり,治療できる疾患となりました。発生機序で特に大切なのが,創にかかる張力です。創に張力が加わると,炎症が惹起され膠原線維の過剰な産生・蓄積が生じます。ケロイドは元来「創の範囲を超えて正常皮膚に浸潤していく」と「腫瘍」のように無秩序に増殖していくと考えられていましたが,引っ張られる方向に炎症が生じ,広がっていくことがコンピューターによるシミュレーションで示されました。
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