急激な気温の変化が、脳血管障害をはじめとするさまざまな循環器疾患のトリガーになることはよく知られている。それに加え気象前線の通過も、脳梗塞リスクに影響を及ぼしている可能性が明らかになった。寒冷前線通過の6日後、温暖前線通過の翌日は、脳梗塞発症の相対リスクがそれぞれ1.17(95%信頼区間:1.01-1.36)、1.63(同:1.25-2.12)へ有意に増加していた。このリスク増加には、気温の変化に加え、気圧の変化も関与している可能性が 考えられるという。3月16〜19日に大阪市で開催された日本脳卒中学会で、広島大脳神経内科学の下村 怜氏が報告した。
同氏らが解析対象としたのは、2012〜13年に広島県内の急性期病院7施設に入院した、発症後7日以内の脳血管障害患者3935例。気象庁発表データと照らし合わせ、前線通過と脳血管障害発生の関係を調べた。
前線通過が心血管系イベントに及ぼす影響については、本研究以外にも米国19都市で観察したリー(Lee) による15年の報告がある(Int J Biometeorol)。評価イベントは本研究と異なり心血管系死亡だったが、やはり寒冷前線通過の4、5日後、ならびに温暖前線当日と翌日に、それらイベントの有意な増加を観察している。