ステロイド性骨粗鬆症(GIO)の病態の主体は骨芽細胞の分化抑制,骨芽細胞や骨細胞のアポトーシス亢進による骨形成低下である
一次予防,二次予防の両者が重要であり,骨折リスクが高い例では積極的に治療介入を行う
日本骨代謝学会(JSBMR)の「ステロイド性骨粗鬆症の管理と治療ガイドライン 2014年改訂版」は骨折危険因子を組み合わせたスコア法で薬物療法の適応を決定する
骨折危険因子は年齢,ステロイド(GC)投与量,腰椎骨密度,既存骨折である
治療薬の中心はビスホスホネート(BPs)であるが,難治例にはテリパラチドも推奨される。推奨薬剤は原発性骨粗鬆症とは必ずしも一致しない
骨粗鬆症は長期ステロイド(glucocorticoid:GC)治療における最も重要な副作用のひとつである。GCはリウマチ性疾患をはじめ多疾患領域で広く使用されているため,ステロイド性骨粗鬆症(glucocorticoid-induced osteoporosis: GIO)は患者数が多い。また,小児から高齢者,閉経前女性や男性にも幅広く起きるため,社会生活への影響は大きい。長期GC治療を受けている患者の30~50%に骨折が起こるとの報告があり,骨密度に比して骨折が起きやすいのも特徴である1)~3)。
一方,原疾患の治療に携わる医師は骨粗鬆症の専門医でない場合が多く,患者も原病の治療に目が向いているため,医師,患者ともにGIOに関する認識が高くない。本稿ではGIOの病態,特徴,管理と治療について概説する。
GIOの病態には骨形成低下と骨吸収亢進の両者が関与しているが,その中心は骨形成低下である4)。骨形成低下には多因子が関与している。一方,骨吸収亢進の中心的機序は,腸管Ca吸収低下と尿中Ca排泄増加の結果生じる二次性副甲状腺機能亢進症である。
GCは骨芽細胞や骨細胞のアポトーシスを促進し,寿命を短縮させる。GCによる骨細胞のアポトーシス誘導は骨細胞-骨小腔-骨細管ネットワークに影響を与え,骨の脆弱性の一因となっている可能性がある5)。さらに,骨芽細胞の増殖抑制やコラーゲン・非コラーゲン蛋白の産生抑制は,GCの直接作用のほか,副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)抑制を介する副腎や性腺由来のホルモンの低下,IGFやIGF結合蛋白を介する間接的な影響も関与している。また,GCは幹細胞から骨芽細胞への分化に重要な転写因子Runx2を抑制することで骨芽細胞への分化を阻害し,脂肪細胞への分化に関与する転写因子PPARγ2の発現を高め,脂肪細胞への分化や分化転換を促進する。
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