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(トピック2)自立度と睡眠時間[特集:眠れない患者に対応する]

No.4731 (2014年12月27日発行) P.36

塩見利明 (愛知医科大学睡眠科教授)

内田亜希子 (愛知医科大学睡眠科)

登録日: 2016-09-01

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  • 1日24時間は地球の自転の時間であるが,ヒトの睡眠時間はいったい何が決めているのだろうか。科学的には,当然,内因性の要因として体内時計や時計遺伝子,外因性としては昼夜や季節の照度などの様々な影響のためと考えられる。しかし,それ以外の要因として臨床的に最も疑われるものは,その人の自立度または仕事ではないだろうか。

    (1)自立度と睡眠サイクルの獲得

    人間とはひとつの個体(個)である。内科を受診する成人と小児科を受診する子どもは,体格のみならず自立度が明らかに異なる。内科の患者は,いわゆる社会人として自立しているため,自分で働き収入を得て家族を養い,病気の場合にはほとんどが仕事を休んで受診してくる。一方,小児は,まだ自立しつつある個体であり,親などに生活を頼り学校で教育を受けている。
    ①学生時代の授業時間と,②レム睡眠の出現サイクル(出現間隔)との関連は,偶然かもしれないがほぼ一致している。小学1年生はともに45分,そして50分,60分と延び,大学生で90分の授業を我慢して聞けるようになると,成人のレム睡眠の90分サイクルを獲得し,社会人となっても自立ができ,同時に成人の睡眠習慣を獲得できるようになっている。

    (2)体内時計と時計遺伝子の働き

    1972年に体内時計(視床下部にある視交叉上核),1997年に時計遺伝子(時計細胞の中で時を刻む遺伝子)が発見され,近年,それらの仕組みも徐々に解明されてきた。体内時計は,隔離実験などではフリーラン(自由継続:固有の周期でリズムが出現)する。一方,社会人は仕事や家庭のために必死で自分の体内時計の1日を24時間ちょうどに合わせるよう努力している。暮らす地域の時刻と体内時計の時刻のずれが少ない人ほど,社会性があると言えるのかもしれない。
    現代のサラリーマンの睡眠時間を決定している最大の要因は,間違いなく職場,もしくは家庭での仕事の時間(量)であろう。すなわち,精神的かつ身体的に健康なサラリーマンは,社会人として自由に自分の睡眠時間を決めるのではなく,逆に仕事や家庭の都合にほとんどの時間を費やし,それらの残りが睡眠時間(休息も含む)であるといっても過言ではない。そのため,わが国では勤勉な社会人のほとんどが慢性的に軽度な睡眠不足に陥りがちである。

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