ガイドラインにしたがって,脳梗塞発症のリスク評価を行い,それに応じて適切な抗凝固薬を選択する
新規経口抗凝固薬(NOAC)は,ワルファリンと比較して脳梗塞予防効果は同等かそれ以上,大出血発症率は同等かそれ以下,頭蓋内出血は大幅に少ないので優越性を有している。そのため,まずNOACの適応を考慮する
ワルファリン療法ではPT-INRが治療域内(70歳以上では1.6~2.6,70歳未満では2.0~3.0)に入るよう,ワルファリンの用量調節を行う
高齢社会が進むにつれ,高齢者に多い心房細動症例や心房細動に伴う脳梗塞が増加する中で,新規経口抗凝固薬(novel oral anticoagulants:NOAC)が相次いで登場した1)~5)。これを受けて,日本循環器学会の心房細動薬物治療のガイドラインが大幅に改訂され,「心房細動治療(薬物)ガイドライン(2013年改訂版)」〔班長:井上 博(富山大学理事・副学長)〕として発表された(図1)6)。
本稿では,ガイドライン内で扱われている「非弁膜症性心房細動(NVAF)の定義」,「新規経口抗凝固薬(NOAC)の位置づけ」,「脳梗塞のリスク評価にはCHADS2スコアかCHA2DS2-VAScスコアか」,「ワルファリン療法における至適なPT-INR」,および「抗血小板薬の位置づけ」を概説する。
非弁膜症性心房細動(non-valvular atrial fibrillation:NVAF)とは,単に弁疾患を伴わない心房細動という意味ではないので注意を払いたい。ガイドラインでは「弁膜症性心房細動」と「非弁膜症性心房細動」の定義が明示されている6)。弁膜症性心房細動とはリウマチ性僧帽弁疾患(主に狭窄症),人工弁置換(機械弁,生体弁ともに)の既往を有する心房細動のみを意味する。それ以外の心疾患に合併する心房細動は,僧帽弁修復術後や非リウマチ性僧房弁閉鎖不全に合併したものを含めて,すべてNVAFと定義づけられている。したがって,高齢者に多い大動脈弁狭窄や高血圧性心疾患で,心不全合併例にみられる僧帽弁閉鎖不全などに合併した心房細動はNVAFである。NOACの添付文書に記されている効能が「非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制」であることから,NVAFの定義づけを再確認し,銘記することは重要である。
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