脳のレベルで認知行動療法が作用すると考えると,もっと単純に脳の働きを鍛えてやればよいという考えに至ります。近年,精神科臨床において認知機能障害への治療的介入の必要性が広く認識されるようになり,様々な認知リハビリテーション技法が提案されてきています。認知リハビリテーション療法の臨床応用の可能性と課題について,国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所・中込和幸先生にご回答をお願いします。
【質問者】
岡本泰昌 広島大学大学院医歯薬保健学研究院 応用生命科学部門准教授
精神科臨床において認知機能障害が注目されるようになったのは,患者の社会生活を支える社会機能と関連し,その改善が社会機能の改善につながることが期待されたからです。新規抗精神病薬によって,治療困難とされてきた認知機能障害が改善する可能性が示唆されたためでもあります。そのため,認知機能障害をターゲットにした様々な認知リハビリテーション技法が開発されました。その共通する特徴は,脳の神経可塑性の仮説に基づき,特定の脳神経活動に伴う課題に従事することで,脳機能,認知機能の改善をめざす治療法であるという点です。
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